ファルコン&ウィンター・ソルジャー
The Falcon and the Winter Soldier / 2021年
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でスティーブ・ロジャースから盾を託されたサム・ウィルソンが、「自分はキャプテン・アメリカになるべきなのか」と向き合い、最終的に自分自身の意志で新たなキャプテン・アメリカとなる物語です。
同時に、ヒドラによって長年ウィンター・ソルジャーとして利用されてきたバッキー・バーンズが、自分の過去を「忘れる」のではなく、自ら向き合って人生を取り戻していく物語でもあります。
舞台は『エンドゲーム』後。サノスの指パッチンで消えた人々が5年後に戻った**「ブリップ」後の世界では、戻ってきた人々と、その5年間を生きてきた人々の間で住居・国籍・仕事・物資を巡る深刻な問題が発生していました。国境のない世界を理想とするフラッグ・スマッシャーズ**は、この混乱の中から生まれます。
そしてスティーブが去ったことで、「キャプテン・アメリカとは何なのか」という問題も残されます。
サムは盾を受け取ることに迷い、政府はジョン・ウォーカーを新たなキャプテン・アメリカへ任命。さらに歴史から消された黒人スーパーソルジャーイザイア・ブラッドリーの存在が明らかになることで、星条旗を背負うヒーローという理想と、アメリカという国家が持つ現実の間にある矛盾まで描かれます。
全6話を通して描かれるのは単なる「スティーブの後継者決定戦」ではありません。
スティーブ・ロジャースと同じ人間になるのではなく、サム・ウィルソンだからこそなれるキャプテン・アメリカとは何か。
そこへ至るまでを描く、キャプテン・アメリカの継承の物語です。
詳しいあらすじ
1. 『エンドゲーム』後――元の生活へ戻れない世界
サノスによって消滅していた人々が『エンドゲーム』で戻ってからしばらく後。
サム・ウィルソン/ファルコンはアメリカ空軍へ協力し、特殊任務に参加していました。
チュニジア上空では、ジョルジュ・バトロック率いる武装集団LAFに拉致された空軍兵を救出。飛行能力とレッドウィングを駆使し、領空問題を避けながら任務を成功させます。
サムを支援する若い空軍中尉がホアキン・トレスです。
トレスは同時に、インターネット上で急速に勢力を広げている組織フラッグ・スマッシャーズを調べていました。彼らはブリップ中の「国境の意味が薄れ、人々が協力していた世界」を取り戻そうとしています。
『エンドゲーム』では消えた人々が戻ったことが勝利として描かれました。
しかし本作ではその先へ進み、50億近い人々が突然戻ってきた社会が、本当に何事もなく元通りになるのかという問題を描きます。
ヒーローたちは世界を救いましたが、世界には救われた後の問題が残っていました。

2. サムがキャプテン・アメリカの盾を手放す
『エンドゲーム』の最後、老いたスティーブはサムへ自分の盾を託しました。
しかしサムは、それを自分のものとして使う決意ができません。
ワシントンD.C.で行われた式典で、サムは盾をスミソニアン博物館へ寄贈します。
スティーブ・ロジャースという人物が特別だったのであり、盾を受け継いだから自分がスティーブになれるわけではない。サムには「その象徴は彼のものだ」という思いがありました。
式典へ出席していたジェームズ・“ローディ”・ローズはサムへ理由を尋ねますが、サムの中でも答えは完全には整理されていません。
ここで重要なのは、サムが単純に責任から逃げているわけではないことです。
黒人男性である自分が星条旗の盾を持つことの意味まで含め、キャプテン・アメリカという象徴を自分が背負えるのかという迷いを抱えています。


3. サム・ウィルソン自身の生活
サムは故郷ルイジアナ州デラクロワへ戻り、姉サラ・ウィルソンと再会します。
サラは亡き両親から受け継いだ漁船と家業を守りながら、二人の息子を育てていました。しかしブリップによって5年間サムがいなかった間、一人で生活を支えてきた負担は大きく、船を売ろうと考えています。
サムは家業を守るため銀行から融資を受けようとしますが、有名なアベンジャーズでありながら審査を通過できません。
世界を二度救った人物でも、現実の生活では金銭問題から自由ではありません。
この家族の物語は、終盤でサムがキャプテン・アメリカになる決断ともつながります。
サムが守りたい「アメリカ」は政府や国旗だけではありません。
家族や近所の人々、船を直すため自然に集まってくる地域社会のような、普通の人々が暮らす場所そのものです。

4. バッキー・バーンズの終わらない悪夢
一方、バッキー・バーンズもまた普通の生活へ戻れずにいました。
ワカンダでヒドラによる洗脳を解除され、サノスとの戦いを終えたバッキーは恩赦を受けています。しかし条件としてセラピーへ通い、ウィンター・ソルジャー時代に関係した人々へ償いをすることを求められていました。
彼はノートへ名前を書き、ヒドラの利益を得ていた犯罪者などを一人ずつ追っています。
しかし本当に向き合えずにいる相手がいます。
友人として食事をしている老人ヨリ・ナカジマです。
ヨリの息子は海外滞在中に死亡していました。実際にはヒドラの任務中だったバッキーが、目撃者となった彼を殺していたのです。
バッキーは被害者であると同時に、多くの人を殺した加害者でもあります。
本人の意思ではなかったとしても、その記憶は消えません。
本作におけるバッキーの戦いは敵を倒すことではなく、**「ウィンター・ソルジャーではない自分として、どう生き直すのか」**です。


5. 政府が発表した「新キャプテン・アメリカ」
サムは、自分が寄贈した盾が博物館へ保管されると思っていました。
ところが政府はその盾を使い、新たなキャプテン・アメリカを発表します。
選ばれたのは米陸軍兵士ジョン・ウォーカー。
サムはテレビ越しに、スティーブから託された盾を知らない男が掲げている姿を目撃します。
バッキーはこの知らせに激怒します。
スティーブが自分ではなくサムを選んだことには意味があった。それなのにサム自身が盾を手放したことで、その意志まで否定されたように感じたからです。
さらにバッキーにとって、もしスティーブがサムを見誤っていたのだとすれば、「スティーブが自分を救える人間だと信じてくれたこと」まで間違いだったのではないか、という恐怖につながっています。
盾の問題は、サムだけではなくバッキー自身の救いにも結びついていました。


6. フラッグ・スマッシャーズはスーパーソルジャーだった
サムとバッキーは、フラッグ・スマッシャーズが物資を運んでいるという情報を追ってミュンヘンへ向かいます。
トラックへ潜入した二人は、リーダーの少女カーリ・モーゲンソウらと戦闘になります。
そこで判明したのが、彼らが単なる活動家ではないことです。
複数のメンバーがバッキーと互角に近い身体能力を持つスーパーソルジャーとなっていました。
さらに戦闘へ割って入ったのがジョン・ウォーカーと相棒レマー・ホスキンス/バトルスターです。
しかし4人でもフラッグ・スマッシャーズを止められません。
スーパーソルジャー血清はスティーブで終わったはずでした。
その力が再び世界へ広がっている。
この謎によって、サムとバッキーはキャプテン・アメリカの歴史そのものを掘り返すことになります。


7. ジョン・ウォーカーという「選ばれたキャプテン」
ジョンは単なる偽物のキャプテン・アメリカではありません。
軍人として極めて優秀で、勲章も受け、身体能力や判断力も一般兵を大きく上回っています。
本人もスティーブを尊敬し、キャプテン・アメリカの名に恥じない人物になろうとしています。
しかしサムやバッキーから見れば、政府に選ばれただけでスティーブの盾を持つ男です。
ジョンは協力を申し出ますが、二人は拒否します。
スティーブがキャプテン・アメリカだったのは、政府から命令されたからではありません。むしろ『ウィンター・ソルジャー』や『シビル・ウォー』では、正しいと思えば政府にも逆らいました。
政府が「最も優秀な兵士」を選べば、新しいキャプテン・アメリカを作れるのか。
ジョンの存在そのものが、その問いになります。

8. 歴史から消されたスーパーソルジャー、イザイア・ブラッドリー
バッキーは、スーパーソルジャーについて知る人物としてサムを一人の老人の家へ連れて行きます。
その男がイザイア・ブラッドリーです。
彼もまたスーパーソルジャーでした。
朝鮮戦争中にはウィンター・ソルジャーだったバッキーと戦い、その金属製の腕を破壊するほどの力を持っていました。
しかし英雄として称えられることはありませんでした。
軍によって約30年間投獄され、その身体を利用した実験まで受けていたのです。
サムは衝撃を受けます。
スティーブ・ロジャースはアメリカを代表する英雄になった一方、黒人のスーパーソルジャーは存在そのものを歴史から消されていた。
しかも家を出た直後には、警察官がバッキーではなくサムを警戒する場面まで起きます。
ここからサムにとって「黒人である自分がキャプテン・アメリカになる」という問題は、より重い意味を持ち始めます。

9. スーパーソルジャーの情報を求めてジモを脱獄させる
血清の出所を探すため、バッキーはある人物へ会うことを提案します。
ヘルムート・ジモです。
『シビル・ウォー』でアベンジャーズを内部から分裂させた張本人であり、現在は刑務所へ収監されていました。
ジモはスーパーソルジャーという存在そのものを危険視しています。
人間が超人的な力を持ち、自分を他者より優れた存在だと考え始めれば、いずれ支配思想へつながる。それが彼の考えです。
バッキーはジモから情報を聞き出すだけのつもりだとサムへ話しますが、実際には密かに脱獄まで成立させます。
こうしてサムとバッキーは、かつてアベンジャーズを破壊した敵と一時的に手を組むことになります。

10. マドリプール――再びウィンター・ソルジャーを演じるバッキー
三人は血清の出所を追い、犯罪都市マドリプールへ向かいます。
ジモは富豪である自分の裏社会での人脈を利用し、サムを「スマイリング・タイガー」、バッキーを再び「ウィンター・ソルジャー」として潜入させます。
情報を得るためとはいえ、バッキーは酒場でかつての殺人兵器だった自分を再演しなければなりません。
ジモの命令で男たちを倒す姿は、周囲には本物のウィンター・ソルジャーが戻ったように見えます。
洗脳そのものは解けていても、自分が最も戻りたくない姿を武器として使わなければならないことが、バッキーの傷がまだ終わっていないことを示しています。
三人は裏社会の人物セルビーから、血清を作った科学者がウィルフレッド・ネイゲル博士であるとの情報を得ます。

11. シャロン・カーターとの再会と血清の正体
身元が露見し追われる三人を助けたのは、シャロン・カーターでした。
『シビル・ウォー』でスティーブたちへ協力した結果、シャロンはアメリカへ戻れない逃亡者となり、マドリプールで生活していました。
シャロンの協力でネイゲルの研究所を発見します。
ネイゲルはCIA時代、イザイア・ブラッドリーの血液を利用してスーパーソルジャー血清の再現研究を進めていました。
さらにマドリプールを支配する謎の人物パワー・ブローカーの支援を受け、20本の完成した血清を作ります。
ところがカーリたちはその血清を盗み、自分たちへ使用していました。
ここでイザイアが受けた人体実験が現在の事件へ直結します。
歴史から消された彼の身体が、本人の知らないところで新たなスーパーソルジャーを生み出していたのです。


12. カーリ・モーゲンソウが戦う理由
フラッグ・スマッシャーズを率いるカーリは、単純に世界を破壊しようとしているわけではありません。
ブリップ中には国境を越えて人々が移動し、空いた土地や仕事を使いながら新しい生活を築いていました。
しかし消えていた人々が戻ると、各国政府は以前の国境や所有権を復活させようとします。
その結果、ブリップ中に生活を築いた人々の多くが難民キャンプへ追いやられました。
これを管理しているのが**世界再定住評議会(GRC)**です。
カーリたちはGRCが保管している食料や医薬品を奪い、難民へ配っています。
サムはその背景を理解し、カーリを単純なテロリストとして処理するのではなく、話し合おうとします。
しかしカーリも次第に過激化します。
「目的が正しいなら犠牲も仕方がない」という考えへ進んでいくことで、サムと彼女の道は分かれていきます。

13. ドーラ・ミラージュとジモを巡る対立
ジモの脱獄を知ったワカンダも動き始めます。
現れたのはアヨ率いるドーラ・ミラージュです。
ジモはティ・チャカ国王を死なせた人物であり、ワカンダにとって許すことのできない犯罪者です。
アヨはバッキーへ猶予を与え、ジモを引き渡すよう要求します。
ここではバッキーとワカンダの複雑な関係も描かれます。
ワカンダは彼の洗脳を解き、新しいヴィブラニウム製の腕まで与えてくれた国です。その恩がある一方、現在はそのワカンダが最も許さない人物を利用しています。
そしてジョン・ウォーカーまで介入したことで状況は悪化。
ドーラ・ミラージュはスーパーソルジャーではないにもかかわらずジョンたちを圧倒し、その混乱に乗じてジモは逃亡します。
ジョンにとって、自分が「キャプテン・アメリカなのにまったく相手にされない」という経験は大きな屈辱となります。

14. 残された一本のスーパーソルジャー血清
サムはカーリと一対一で話し合います。
カーリの怒りを否定せず、彼女が何と戦っているのか理解しようとすることで、少しずつ心を開かせます。
しかしジョンが我慢できず介入したため交渉は決裂。
逃走するカーリをジモが撃ち、落としたスーパーソルジャー血清を次々と破壊します。
ジモは以前から一貫して、スーパーソルジャーという存在そのものを認めていません。
しかし一本だけ破壊を免れます。
それを拾ったのがジョン・ウォーカーでした。
ジョンは親友レマーへ「もし血清があれば使うか」と問いかけています。
レマーは、力そのものが人間を変えるのではなく、もともとの人間性を強めるのだと考えます。
これはかつてアースキン博士がスティーブについて語った問題とほぼ同じです。
スティーブ・ロジャースを作った血清を使えば、キャプテン・アメリカになれるのか。
ジョンはその答えを自分の身体で試すことになります。

15. レマーの死と血に染まった盾
ジョンは密かにスーパーソルジャー血清を使用します。
フラッグ・スマッシャーズとの戦闘では明らかに以前を超える怪力を発揮しますが、その最中、親友レマーがカーリによって壁へ叩きつけられ死亡します。
ジョンは完全に冷静さを失います。
逃げるフラッグ・スマッシャーの一人を追跡し、大勢の市民が見ている広場で捕まえます。
男は自分がレマーを殺したのではないと訴えます。
それでもジョンは、キャプテン・アメリカの盾で何度も殴りつけ、その場で殺害します。
周囲ではスマートフォンが向けられ、その映像は世界へ拡散します。
スティーブが守るために使ってきた盾に血が付着します。
本作でも最も象徴的な場面です。
キャプテン・アメリカという名前、制服、盾、スーパーソルジャーの力。
ジョンはすべてを手に入れました。
それでもキャプテン・アメリカにはなれなかったことが決定的に示されます。


16. サムとバッキーが盾を取り戻す
事件後、サムとバッキーはジョンへ盾を渡すよう求めます。
しかしジョンは拒否。
三人の激しい戦闘になります。
血清によって強化されたジョンは二人を圧倒し、一度は盾でサムを殺しかけます。それでもサムとバッキーは協力し、最後にはジョンの腕を折りながら盾を奪還します。
サムのファルコン・スーツの翼も破壊されました。
戦いの後、バッキーは血の付いた盾をサムの前へ置いて去ります。
政府はジョンからキャプテン・アメリカの称号を剥奪します。
ジョンは「政府に命じられたことをやってきた」と反発しますが、政府にとって彼はもう象徴として利用できない存在になっていました。
そこで接触してくるのが謎の女性ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌです。
彼女は失脚したジョンに、まだ使い道があると告げます。


17. イザイアがサムへ語る「黒人キャプテン・アメリカ」
盾を取り戻したサムは、再びイザイアを訪ねます。
そこで、彼が受けた仕打ちの詳細を聞きます。
イザイアは戦争中、捕虜となった仲間のスーパーソルジャーたちを救うため軍命に反して行動しました。
スティーブが第二次世界大戦でバッキーたちを救出したのと似た行動です。
しかしスティーブが英雄になったのに対し、イザイアは投獄され、約30年間にわたって実験対象にされました。
この経験からイザイアは、アメリカが黒人をキャプテン・アメリカとして受け入れることなどないと考えています。
サムにとって簡単に否定できる言葉ではありません。
だからこそ本作は、「差別なんて気にせず盾を持てばいい」という単純な答えにはしません。
サムはイザイアの言葉も歴史も理解したうえで、それでも自分が盾を持つ意味を自分自身で決める必要があります。

18. サムが盾を受け入れる
サムはルイジアナへ戻り、家族の船を修理します。
地域の人々が次々と集まり、亡き両親との関係から自然に修理を手伝ってくれます。
そこへバッキーも現れます。
バッキーはワカンダへ頼んで用意してもらったケースをサムへ渡し、そのまま船の修理を手伝います。
二人はこれまでスティーブを通してつながっていましたが、ここで初めてスティーブ抜きでも友人になり始めます。
そして盾を投げ合いながら話す中で、バッキーはサムが盾を手放した理由を自分の感情だけで責めていたことを謝ります。
サムもバッキーへ、過去の被害者に謝罪して自分の罪悪感を軽くするだけではなく、彼らが前へ進むために何ができるのかを考えるべきだと話します。
サムはその後、一人で盾を使う訓練を続けます。
もう「スティーブになれるか」を考えているのではありません。
サム・ウィルソンとして盾を持つ準備を始めたのです。

19. 新たなキャプテン・アメリカ誕生
フラッグ・スマッシャーズは、ニューヨークで行われるGRCの会議を襲撃します。
各国代表を人質にし、ブリップ中に移住した人々を強制的に元の国へ送り返す政策を阻止しようとしていました。
そこへ現れたのがサムです。
ワカンダ製の新しいスーツを身にまとい、背中にはファルコンの翼、左腕にはスティーブから受け継いだ盾。
サムはついにキャプテン・アメリカとして戦場へ現れます。
ここが本作におけるサムの完成です。
スティーブと同じスーパーソルジャーにはなっていません。
サムには血清による超人的な力がない。
代わりに飛行能力、戦闘経験、軍人としての経験、退役軍人を支援していたカウンセラーとしての能力、そして相手の立場を理解しようとする姿勢があります。
スティーブのコピーではないキャプテン・アメリカがここで誕生します。

20. ジョン・ウォーカーが選び直したもの
戦場にはジョン・ウォーカーも現れます。
自作した盾を持ち、レマーの復讐のためカーリを追っています。
しかし戦闘の途中、フラッグ・スマッシャーズによってGRC関係者を乗せた車両が高所から落とされそうになります。
目の前には逃げるカーリ。
もう一方には死にかけている人々。
ジョンは一瞬迷った後、カーリへの復讐ではなく人命救助を選びます。
彼がスティーブのようなキャプテン・アメリカになれるわけではありません。
しかしレマーを失った直後のように、怒りだけに支配されているわけでもなくなっています。
ジョンは本作で完全な悪役になるのではなく、失敗し、転落しながらも、別の道を歩き始める人物として残されます。

21. パワー・ブローカーの正体
戦いにはシャロン・カーターも協力します。
しかしそこで、これまで謎だったパワー・ブローカーの正体がシャロン本人だったことが明らかになります。
『シビル・ウォー』でスティーブたちを助けた後、彼女は政府から追われ、ヒーローたちからも救われないままマドリプールで生き延びていました。
その中で裏社会へ入り、ネイゲルへ血清を作らせていたのです。
カーリたちは元々シャロンのもとで働いていましたが、完成した血清を盗んで逃亡していました。
バトロックはシャロンの正体を知って金を要求しますが、シャロンが射殺。
その後、カーリもシャロンを撃ちます。
サムは最後までカーリを説得しようとし、自分から攻撃しません。
カーリがサムへ銃を向けた瞬間、負傷したシャロンが彼女を撃ちます。
カーリはサムの腕の中で死亡します。


22. サム・ウィルソンが示すキャプテン・アメリカの答え
事件後、GRC関係者はカーリたちを「テロリスト」と呼びます。
しかしサムは、その言葉だけで問題を終わらせることを拒否します。
カーリたちの行動は間違っていた。
それでも、なぜ世界中の人々が彼らをかくまい、協力するほど支持したのかを考える必要があると訴えます。
GRCの政治家たちは国境や数百万人の生活を変える力を持っています。
サムは、圧倒的な力を持つ者が、その決定によって影響を受ける人々の立場を理解しなければならないと問いかけます。
ここにサムがキャプテン・アメリカとして選ばれる理由があります。
彼は最強ではありません。
政府の命令へ最も忠実な兵士でもありません。
分断された双方の話を聞き、それでも間違った行動は止め、問題そのものから目を背けない人物です。
それがスティーブとは違う、サム・ウィルソン版キャプテン・アメリカの答えです。

23. バッキー・バーンズの贖罪
サムの言葉を受けたバッキーも、自分の問題へ向き合います。
ヨリの家を訪ね、自分が彼の息子を殺したウィンター・ソルジャーだったことを告白します。
「ヒドラに操られていたから自分には責任がない」と逃げるのではありません。
選択肢を奪われていたことを伝えながら、それでも真実を本人へ話します。
その後、セラピストのレイナー博士へ、償いのリストに書かれていた名前をすべて消したノートを返します。
バッキーは過去を消すことには成功していません。
しかしようやく、過去だけを見ながら生きることをやめ始めます。
そして最後にはルイジアナを訪れ、サムの家族や地域の人々と一緒に穏やかな時間を過ごします。
1940年代から長い間居場所を失ってきたバッキーが、新しい時代で新しい人間関係を作り始める結末です。

24. イザイア・ブラッドリーを歴史へ戻す
サムはイザイアと孫のイーライ・ブラッドリーをスミソニアン博物館へ連れて行きます。
キャプテン・アメリカの展示の一角には、新しくイザイアの功績を伝える展示が作られていました。
長年、政府によって存在を隠されてきた黒人スーパーソルジャー。
サムはその歴史をなかったことにせず、人々が知る場所へ残します。
サムが盾を持つことは、過去のアメリカを無条件に肯定することではありません。
間違った歴史まで認めたうえで、その象徴をより良いものへ変えていく。
だからこそ、サムはイザイアの存在を隠したままキャプテン・アメリカになるのではなく、イザイアもキャプテン・アメリカの歴史の一部へ戻してから前へ進みます。

ポストクレジット
事件後、シャロン・カーターには正式な恩赦が与えられます。
政府関係者は『シビル・ウォー』での行動を許し、彼女へ再び政府機関で働く道を用意します。
しかし建物を出たシャロンは何者かへ電話をかけます。
スーパーソルジャー血清は失われたものの、これからは政府内部の機密情報や新型兵器へアクセスできると伝えます。
つまり政府は、マドリプールのパワー・ブローカーを自分たちの内部へ迎え入れてしまったことになります。

主要キャラクターまとめ

サム・ウィルソン/ファルコン/キャプテン・アメリカ
元空軍兵で、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』からスティーブを支えてきたヒーロー。
『エンドゲーム』でスティーブから盾を託されますが、本作序盤ではそれを受け取る意味に確信を持てず、一度手放します。
ジョン・ウォーカーやイザイア・ブラッドリー、カーリとの出会いを通じ、「キャプテン・アメリカになる」とは単にスティーブの衣装と盾を受け継ぐことではないと理解。
最終的には黒人としてアメリカの矛盾も背負いながら、それでも逃げずに象徴を変えていく道を選びます。
本作以降は正式にキャプテン・アメリカ/サム・ウィルソンとなり、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』へ続きます。

バッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー
スティーブ・ロジャースの幼なじみであり、長年ヒドラに洗脳され暗殺者として利用されたスーパーソルジャー。
本作では洗脳そのものは解かれていますが、過去の罪悪感から自由になれていません。
序盤ではスティーブとの関係だけが自分の人生を支える状態でしたが、サムとの友情を作り、自ら被害者と向き合うことで、「スティーブの親友」でも「ウィンター・ソルジャー」でもないバッキー・バーンズとして生き始めます。
後にはジョン・ウォーカーらとともに『サンダーボルツ*』へつながります。

ジョン・ウォーカー/キャプテン・アメリカ/U.S.エージェント
政府によってスティーブの後継者へ選ばれた優秀な兵士。
最初から悪人だったわけではなく、キャプテン・アメリカとして認められたいという思いも本物です。
しかし「スティーブのようにならなければならない」という重圧、サムやバッキーから認められない苛立ち、自分より強い存在への劣等感が積み重なり、スーパーソルジャー血清へ手を出します。
レマーの死によって暴走し、盾で敵を公開処刑したことで資格を剥奪されます。
それでも終盤では復讐より人命救助を選び、完全な悪役にはなりません。
最終的にヴァレンティーナから黒を基調とした新しい制服を与えられ、U.S.エージェントとなります。後に『サンダーボルツ*』へ登場します。

カーリ・モーゲンソウ
フラッグ・スマッシャーズのリーダー。
スーパーソルジャー血清によって強化されています。
ブリップ後の政策によって生活を奪われた人々を救いたいという出発点そのものには理由があり、サムもそこを理解しています。
しかし目的のためなら殺人も許される方向へ過激化し、最終的にはサムの説得を受け入れられないまま死亡します。
カーリは「間違った思想を持つヴィラン」というより、現実に存在する問題へ怒りながら、その解決方法を誤った人物として描かれます。

ヘルムート・ジモ
『シビル・ウォー』でアベンジャーズを分裂させた人物。
本作ではスーパーソルジャー血清の追跡に必要な情報を持つため、サムとバッキーに協力します。
一貫して「超人が特別な存在として崇拝されること」を危険視しており、発見した血清も迷わず破壊します。
カーリたちがスーパーソルジャーになった理由には理解を示しませんが、思想としては最後まで一貫しています。
最終的にはドーラ・ミラージュに確保され、ラフト刑務所へ送られます。

シャロン・カーター/パワー・ブローカー
元S.H.I.E.L.D.およびCIA関係者で、ペギー・カーターの姪。
『シビル・ウォー』でスティーブたちを助けたことで逃亡者となり、マドリプールへ渡りました。
その後、裏社会で勢力を拡大し、パワー・ブローカーとなっています。
サムたちを助ける一方、スーパーソルジャー血清を作らせた人物でもあり、終盤ではバトロックとカーリを殺害。
さらに恩赦によって政府内部へ戻ることに成功します。
「ヒーローを助けた結果、自分だけが見捨てられた人物」が大きく変化した姿です。

イザイア・ブラッドリー
朝鮮戦争時代に活動していた黒人スーパーソルジャー。
スティーブと同じように仲間を救う行動を取ったにもかかわらず英雄とはならず、政府によって投獄・実験され、その存在まで隠されました。
サムに「黒人がキャプテン・アメリカになること」の重さを突きつける人物です。
最後にはサムによって功績が公表され、スミソニアンに展示が作られます。
後に『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』にも登場します。

ホアキン・トレス
アメリカ空軍中尉で、サムの任務を支援する若い兵士。
フラッグ・スマッシャーズの調査を早くから続け、事件中もサムへ情報を提供します。
破壊されたファルコンの翼をサムから預けられることが、後の展開への伏線。
後に『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』で2代目ファルコンとなり、キャプテン・アメリカとなったサムの相棒になります。
重要アイテム・組織
キャプテン・アメリカの盾
スティーブ・ロジャースからサムへ直接託されたヴィブラニウム製の盾。
本作では武器以上に、**「キャプテン・アメリカという象徴を誰が持つ資格があるのか」**を表す存在です。
サム→政府→ジョン→サムと持ち主が移ることで、それぞれのキャプテン・アメリカ観が描かれます。
特にジョンが人間を殺した後に血が付着した盾は、「象徴は持つ人間によって意味が変わる」ことを強烈に示します。
スーパーソルジャー血清
スティーブ・ロジャースを生み出した技術の新たな再現版。
ネイゲル博士がイザイア・ブラッドリーの血液研究を基礎として完成させます。
本作ではカーリたちとジョン・ウォーカーが使用。
重要なのは力そのものではなく、力を与えられた時にその人間が何を選ぶのかという問題です。
フラッグ・スマッシャーズ
カーリ・モーゲンソウが率いる集団。
スローガンは「One World, One People」。
ブリップ中に生まれた国境を越えた社会を理想とし、GRCによる再定住政策へ抵抗します。
思想そのものには多くの支持者がいる一方、カーリたちの手段は次第にテロへ変化します。
世界再定住評議会(GRC)
ブリップによって戻ってきた人々と、5年間を生き続けた人々の住居・国籍・社会復帰などを処理する国際組織。
本作の社会問題の中心にある存在です。
GRC側にも世界を元へ戻さなければならない事情がありますが、その政策によって新たに生活を築いていた人々が追い出され、フラッグ・スマッシャーズ誕生の原因になります。
マドリプール
政府の統治が及びにくい犯罪都市。
世界中の犯罪者や裏社会の人物が集まり、パワー・ブローカーが大きな影響力を持っています。
サム、バッキー、ジモがスーパーソルジャー血清を追って訪れ、逃亡後のシャロンがどのような世界で生きてきたのかも明らかになります。
サムの新キャプテン・アメリカ・スーツ
バッキーがワカンダへ依頼して用意した新装備。
ファルコンとしての翼とレッドウィングを残しながら、キャプテン・アメリカの盾を同時に使用できる設計となっています。
つまりサムはファルコンを捨ててスティーブになるのではなく、ファルコンとして積み上げてきた能力の延長線上でキャプテン・アメリカになることがデザインそのものでも表現されています。
MCU的に重要なポイント
1. サム・ウィルソンが正式にキャプテン・アメリカとなる
『エンドゲーム』で盾を渡された時点ではまだ「継承候補」でした。
本作でサム自身が盾を受け入れたことで、正式にキャプテン・アメリカ/サム・ウィルソンが誕生します。
この物語は直接『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』へつながります。
2. ジョン・ウォーカー/U.S.エージェント誕生
二代目キャプテン・アメリカとして登場したジョンは失脚後、ヴァレンティーナにスカウトされてU.S.エージェントとなります。
後の『サンダーボルツ*』へつながる重要な起点です。
3. ホアキン・トレス登場
本作ではサムを支える空軍中尉ですが、サムから壊れたファルコン装備を受け取ります。
後にサムがキャプテン・アメリカとなったことで、ホアキンが2代目ファルコンを継承します。
4. イザイア・ブラッドリーの存在
スーパーソルジャー計画がスティーブだけの物語ではなかったことが明らかになります。
同時に、スーパーソルジャーという技術を巡るアメリカ政府の暗い歴史が追加されます。
5. バッキーが「ウィンター・ソルジャーの贖罪」から一歩前へ進む
ワカンダで洗脳は解除されていましたが、本作では精神的な回復まで描かれます。
『ウィンター・ソルジャー』から長く続いてきたバッキーの「自分は誰なのか」という問題に一つの区切りがつきます。
6. ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ登場
ジョン・ウォーカーをスカウトする謎の人物として初登場。
以降のMCUで複数の特殊人物をまとめていく存在へつながります。
7. シャロン・カーター=パワー・ブローカー
『シビル・ウォー』後に行方不明だったシャロンが大きく立場を変えて再登場。
しかも最後には政府内部への復帰まで成功します。
8. 「ブリップ後の世界」が初めて本格的に描かれる
『エンドゲーム』では人々を戻すことが目的でした。
本作はその後、「戻ってきた人々を世界がどう受け入れるのか」という社会レベルの問題を本格的に描きます。
フラッグ・スマッシャーズの存在は、アベンジャーズが世界を救っても、その後の社会問題まで自動的に解決されるわけではないことを示しています。
作品のテーマ
「キャプテン・アメリカ」とは誰なのか
本作最大のテーマです。
スティーブと同じ血清を使えばいいわけでも、政府から任命されればいいわけでも、盾を持てばいいわけでもありません。
ジョンは盾・名前・制服・血清をすべて手に入れながら失敗します。
逆にサムはスーパーソルジャーではありません。
それでも最後にキャプテン・アメリカとして受け入れられます。
本作が示しているのは、キャプテン・アメリカとは能力ではなく、力をどう使い、誰の声を聞き、何を代表しようとする人物なのかという問題です。
スティーブの後継者ではなく、サム自身になる
サムが最初に盾を受け入れられなかった理由の一つは、スティーブという存在があまりにも大きかったことです。
しかし最終的にサムはスティーブの真似をしません。
翼を残し、カウンセラーとして人の話を聞く能力を使い、黒人としての自分の経験からも逃げません。
「次のスティーブ・ロジャース」ではなく「最初のサム・ウィルソン版キャプテン・アメリカ」になる。
そこが本作における継承です。
過去は消せないが、その後の生き方は選べる
これはバッキーの物語です。
彼がウィンター・ソルジャーとして殺した人々は戻りません。
洗脳されていたという事実も、被害者側の悲しみを消すことはできません。
だから本作はバッキーへ「忘れて幸せになればいい」とはしません。
真実を伝え、できる償いをし、そのうえで新しい人間関係を作る。
過去を消すのではなく、過去を抱えたまま未来へ進むことがバッキーの回復として描かれます。
力を持つ者は、誰のためにその力を使うのか
スティーブ、イザイア、カーリ、ジョン。
本作には多数のスーパーソルジャーが登場します。
全員が似た力を持っていても、生き方はまったく違います。
だからスーパーソルジャー血清は単純なパワーアップアイテムではなく、その人間が何者なのかを浮かび上がらせる装置として使われています。
サムだけが血清を使わずキャプテン・アメリカになることも、このテーマをさらに強くしています。
まとめ
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は、『エンドゲーム』でスティーブ・ロジャースが盾を渡した場面を、本当の意味で完結させる作品です。
サムは最初からキャプテン・アメリカになる準備ができていたわけではありません。
政府が生み出したジョン・ウォーカー、歴史から消されたイザイア・ブラッドリー、ブリップ後の世界から見捨てられたカーリ・モーゲンソウと出会い、アメリカという国の理想と現実の両方を知ったうえで、それでも盾を持つことを選びます。
一方のバッキーも、スティーブを失ったことで自分の人生を見失っていました。しかしサムとの友情を築き、ウィンター・ソルジャー時代の被害者へ自分から向き合うことで、ようやくスティーブのいない時代を生き始めます。
つまり本作で継承されるのは盾だけではありません。
スティーブが残した「より良い世界のために戦う」という意志を、サムとバッキーがそれぞれ自分なりの形で受け継ぐ物語です。
そして最後には、ファルコンだったサム・ウィルソンが正式にキャプテン・アメリカとなります。
スティーブ・ロジャースの物語が終わった後、本当の意味で**「次のキャプテン・アメリカの時代」が始まる作品**です。

