ブラック・ウィドウ
Black Widow / 2021年
『ブラック・ウィドウ』はMCU公開順第24作、フェーズ4最初の映画であり、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で逃亡者となったナターシャ・ロマノフが、自分を暗殺者へ育てたレッドルームと、幼少期に「家族」として暮らした人々へ向き合う物語です。
本編の主な時代は2016年。『シビル・ウォー』直後から始まり、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でナターシャがスティーブたちと行動する状態へつながります。冒頭では1995年の幼少期、ポストクレジットでは『アベンジャーズ/エンドゲーム』後まで描かれます。
本作では、エレーナ・ベロワ、アレクセイ・ショスタコフ/レッド・ガーディアン、メリーナ・ヴォストコフ、ドレイコフ、アントニア/タスクマスター、レッドルームなどが本格登場。これまで断片的に語られてきたナターシャの「赤い帳簿」とブダペストの過去を具体化します。
公開順ではすでにナターシャの最期を知っているからこそ、彼女がなぜアベンジャーズを家族と呼び、その家族のために命を懸けられる人物になったのかを補完する作品でもあります。
詳しいあらすじ
1. 1995年――オハイオで暮らすロマノフ一家
1995年、幼いナターシャ・ロマノフは、妹のエレーナ、父アレクセイ、母メリーナとともに、アメリカ・オハイオ州で平凡な家族として暮らしていました。
しかし、この家族は本当の血縁ではありません。
アレクセイとメリーナはロシア側の工作員で、ナターシャとエレーナも任務のために用意された子どもたちでした。一家は数年間アメリカ人家族として潜伏し、アレクセイはS.H.I.E.L.D.に関係する重要情報を盗み出します。
任務が発覚すると、一家は突然オハイオを脱出。銃撃を受けながら小型機で逃亡し、メリーナが負傷しながらもキューバへ到着します。
大人たちにとっては潜入任務でしたが、幼いエレーナにとってオハイオでの生活は本当の家族そのものでした。**「偽物として始まった家族が、本人たちにとっては本物だったのか」**という問いが、本作全体を通して繰り返されます。


2. キューバで引き裂かれる姉妹
キューバで待っていたのは、ブラック・ウィドウを育成する秘密組織レッドルームを率いるドレイコフでした。
アレクセイは任務成功を喜びますが、ナターシャはこれから何が起きるのかを理解しており、エレーナを守ろうとします。しかし二人は武装した兵士たちに引き離され、薬を打たれて意識を失います。
その後、ナターシャとエレーナは他の少女たちとともにレッドルームへ送られ、暗殺者としての教育と訓練を受けます。
少女たちは一人の人間として育てられるのではなく、国家や組織が利用できる「資産」として選別されていきます。
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でナターシャが語っていたレッドルームの過酷な訓練や卒業儀式は、彼女一人の過去ではありませんでした。本作では、同じ仕組みによって世界中の少女たちがブラック・ウィドウへ変えられていたことが明確になります。

3. 2016年――『シビル・ウォー』後の逃亡者ナターシャ
時代は2016年へ進みます。
『シビル・ウォー』でソコヴィア協定へ賛成していたナターシャは、空港でスティーブとバッキーの逃亡を見逃したことで政府から追われる立場になっていました。
国務長官サディアス・ロスはナターシャを拘束しようとしますが、彼女はすでに姿を消しています。
ナターシャは協力者リック・メイソンから偽造身分や潜伏先を用意してもらい、ノルウェーで一人暮らしを始めます。
アベンジャーズは分裂し、スティーブたちは逃亡者、トニー側とも距離ができています。これまで所属する組織を変えながら生きてきたナターシャは、またしても一人になりました。
この孤立が、かつて自分が切り捨てた「もう一つの家族」と向き合うきっかけになります。

4. エレーナが化学的洗脳から解放される
一方、成長したエレーナ・ベロワもブラック・ウィドウとしてレッドルームの任務を続けていました。
任務中、エレーナはかつて同じウィドウだった女性オクサナを追跡します。しかしオクサナは死の直前、赤い薬剤をエレーナへ浴びせます。
その瞬間、エレーナの精神を支配していた化学的な洗脳が解除されます。
ナターシャの世代では訓練、心理操作、恐怖によって従わせていたレッドルームは、現在ではさらに進み、薬物によって本人の意思そのものを奪う支配を完成させていました。
自由を取り戻したエレーナは、他のウィドウたちも解放するため、残された解毒剤をナターシャへ送ります。
彼女が頼ったのは、長年会っていない姉でした。


5. タスクマスターの襲撃
ナターシャのもとへ、エレーナが送った荷物が届きます。
その荷物を運んでいる途中、謎の戦闘員タスクマスターがナターシャを襲撃します。
タスクマスターは、相手の戦闘動作を分析して模倣する能力を持ち、キャプテン・アメリカの盾術、ブラックパンサーの爪を使う動き、ホークアイの弓術、ウィンター・ソルジャーのナイフ術など、アベンジャーズを思わせる戦い方を組み合わせます。
ナターシャは何とか逃げ延び、襲撃の目的が荷物の中に入っていた赤い解毒剤だと気づきます。
さらに送り主の手掛かりから、長く連絡を取っていなかったエレーナがブダペストにいることを知ります。
レッドルームは過去の組織ではなく、現在も動いている可能性が浮かび上がります。

6. ブダペストでエレーナと再会
ナターシャはブダペストの隠れ家へ向かい、そこで成長したエレーナと再会します。
しかし再会は感動的なものではなく、互いに相手を信用できず激しい格闘になります。二人ともレッドルームで鍛えられたため、狭い室内で互角の戦いを繰り広げます。
落ち着いた後、エレーナは現在のレッドルームについて説明します。
ドレイコフは生きており、世界各地に多数のウィドウを潜伏させています。そして現在のウィドウたちは、化学物質によって完全に思考と行動を制御されています。
ナターシャは衝撃を受けます。
彼女はS.H.I.E.L.D.へ寝返る際にドレイコフを殺したと信じており、そのためレッドルームも終わったと思っていたからです。

7. 明かされる「ブダペスト」の真実
MCUでは以前から、ナターシャとクリント・バートン/ホークアイが何度も「ブダペスト」の出来事を口にしてきました。
本作でようやく、その一部が具体的に明らかになります。
かつてナターシャがレッドルームを離れてS.H.I.E.L.D.へ亡命するためには、最大の障害であるドレイコフを排除する必要がありました。ナターシャとクリントは彼の居場所を突き止め、建物を爆破します。
しかしドレイコフ本人を確実に殺すため、ナターシャは彼の幼い娘アントニアが建物内にいると知りながら爆破を実行しました。
ナターシャはアントニアを巻き添えにした罪を、自分の「赤い帳簿」に残る最大級の罪として抱えてきました。
ところがドレイコフは生存していました。
つまりナターシャは、少女を犠牲にしてまで終わらせたと思っていたレッドルームを、実際には終わらせられていなかったのです。

8. レッドルームの追撃と姉妹の本音
ナターシャとエレーナの居場所はレッドルームに知られ、複数のウィドウとタスクマスターが襲撃します。
二人はバイクや車を使ってブダペスト市内を逃走し、地下鉄へ逃げ込みます。
追跡から逃れた後、二人は幼少期の家族について話します。
ナターシャにとってオハイオの生活は「潜入任務」でした。しかしエレーナは、それを否定します。
エレーナは幼かったため、アレクセイを父、メリーナを母、ナターシャを姉だと本気で信じていました。任務が終わったからといって、自分の中にある家族の記憶まで偽物になるわけではありません。
ここでナターシャは、自分が「任務だった」と切り離してきた過去が、エレーナには深い喪失として残っていたことを知ります。

9. レッド・ガーディアンを刑務所から救出
ドレイコフの居場所を知る可能性がある人物として、二人はかつての“父”アレクセイ・ショスタコフを探します。
アレクセイはソ連が生み出したスーパーソルジャー、レッド・ガーディアンでした。本人はキャプテン・アメリカの対抗者としての自分を誇りにしていますが、現在はロシアの刑務所へ収監されています。
ナターシャとエレーナはヘリコプターを使って大胆な脱獄作戦を実行します。
アレクセイは久しぶりに戦えることへ興奮し、囚人たちを相手に大暴れしますが、その間に雪崩が発生。ナターシャとエレーナは崩壊する刑務所からアレクセイを救出します。
再会したアレクセイは娘たちとの家族関係を軽く考えていますが、エレーナにとっては20年以上消えなかった傷です。


10. メリーナのもとで「家族」が再集合する
アレクセイはドレイコフの居場所を知りませんでしたが、かつての“母”メリーナ・ヴォストコフならレッドルームとつながっている可能性があると話します。
三人はロシア郊外に住むメリーナのもとへ向かい、1995年以来となる四人の“家族”が再集合します。
メリーナもレッドルーム出身のウィドウであり、現在は化学的な精神操作の研究にも関与していました。彼女は豚を使い、呼吸さえ外部から制御できる技術を見せます。
食卓では、アレクセイが昔を懐かしむ一方、娘たちは大人たちへ怒りをぶつけます。
特にエレーナは、オハイオでの家族生活が自分にとって本物だったと訴えます。
アレクセイとメリーナにとっては国家から与えられた任務でも、子どもたちにとっては人生そのものだった。その責任を大人たちが初めて正面から突きつけられる場面です。

11. メリーナとナターシャ――家族を信じる作戦
メリーナはすでにドレイコフへ連絡していました。
レッドルームの部隊が現れ、四人は拘束されます。
しかし実際には、ナターシャとメリーナは事前に作戦を立てていました。二人は顔を変える特殊マスクを使って外見を入れ替え、レッドルームへ潜入します。
ナターシャはメリーナの姿でドレイコフへ近づき、メリーナはナターシャとして拘束されます。
これまでナターシャは単独で行動することに慣れていました。しかし今回は、自分をレッドルームへ送り返した過去を持つメリーナを信じ、さらにアレクセイやエレーナと役割を分担します。
偽装家族だった四人が、初めて本当の意味で同じ目的のために協力する家族へ変わり始めます。

12. 空中に隠されていたレッドルーム
ナターシャたちが連れて行かれたレッドルームは、地上の秘密基地ではありませんでした。
巨大な空中施設として雲の上を移動しており、通常の捜索では位置を特定できないようになっています。
ここでドレイコフは、現在のブラック・ウィドウ計画の規模をナターシャへ見せます。
世界中にはレッドルームの支配下に置かれた女性たちが潜伏し、政府、軍、企業などさまざまな場所へ入り込んでいました。ドレイコフは彼女たちを人間ではなく、自分が好きな場所へ配置できる駒として扱っています。
レッドルームは単に暗殺者を育てる施設ではなく、本人の自由意思を奪った女性たちを利用し、世界へ影響を与える巨大な支配システムへ変貌していました。

13. タスクマスターの正体――生きていたアントニア
ドレイコフはナターシャへ、タスクマスターの正体を明かします。
仮面の下にいたのは、ブダペストで死んだと思われていたアントニア・ドレイコフでした。
爆破で重傷を負いながら生き延びたアントニアを、ドレイコフは娘として守るのではなく、身体へ技術を組み込み、レッドルーム最強の兵器へ改造していました。
タスクマスターが他人の戦闘技術を再現できるのも、そのプログラムによるものです。
ナターシャにとってこれは、自分の罪が生きた姿で目の前へ戻ってきたことを意味します。
同時にアントニアもまた、ドレイコフによって意思を奪われた被害者でした。
本作の敵は「ナターシャへ復讐するドレイコフの娘」ではありません。ナターシャの過去の罪と、ドレイコフの支配によって二重に人生を奪われた女性として描かれます。

14. ドレイコフを殴れないナターシャ
ナターシャは正体を明かし、ドレイコフを直接倒そうとします。
しかし身体が攻撃を拒絶します。
ドレイコフは自分のフェロモンを利用し、ウィドウたちが自分へ直接危害を加えられないフェロモン・ロックを設定していました。ナターシャもレッドルームで訓練されたため、その制御を受けています。
そこでナターシャは、ドレイコフを挑発して自分を殴らせ、最後には自ら机へ顔を打ち付けて鼻を折ります。
嗅覚につながる神経を一時的に機能させなくすることでフェロモンの影響を断ち、ようやくドレイコフへ反撃します。
ドレイコフが人間を支配するために作った仕組みを、ナターシャは自分自身を傷つけてでも自由意思を取り戻すことで破ります。

15. エレーナがウィドウたちを解放する
ドレイコフは多数のウィドウを呼び、ナターシャを襲わせます。
ナターシャは彼女たちが自分の意思で戦っていないと知っているため、簡単に殺すことはできません。圧倒的な人数に追い詰められます。
そこへエレーナが現れ、赤い解毒剤を室内へ散布します。
薬剤を吸ったウィドウたちは次々と化学的支配から解放され、自分自身の意識を取り戻します。
序盤でオクサナがエレーナを解放した行動が、ここではエレーナから他の女性たちへ受け継がれます。
レッドルームを倒すとは施設やドレイコフを破壊することだけではありません。支配されている女性たちへ、自分の人生を選ぶ権利を返すことが本当の勝利になります。

16. レッドルーム崩壊とドレイコフの最期
メリーナは施設のエンジンを停止させ、空中のレッドルームは高度を失い始めます。
アレクセイはタスクマスターと戦い、エレーナは脱出しようとするドレイコフの機体を追います。
エレーナは飛行機へ飛び乗り、エンジンを破壊。爆発によってドレイコフは死亡します。
一方ナターシャは、ドレイコフのコンピューターから世界中のウィドウの位置情報を入手します。これにより、解放されたウィドウたちは残る仲間を探して救うことが可能になります。
崩壊する施設から全員が脱出を試みる中、エレーナはパラシュートなしで落下。ナターシャは自分のパラシュートを妹へ渡し、自らも空中へ飛び出します。
ナターシャが誰かを守るために自分を危険へ投げ出す姿は、後のヴォーミアでの選択へも重なります。


17. ナターシャがアントニアを解放する
地上へ落下した後も、タスクマスターはナターシャを追ってきます。
しかしナターシャの目的はアントニアを倒すことではありません。
彼女は最後に残った解毒剤を使用し、アントニアをレッドルームの支配から解放します。
目を覚ましたアントニアへ、ナターシャは謝罪します。
ブダペストの爆破をなかったことにはできません。アントニアが受けた傷も人生も戻りません。
それでもナターシャは、過去の罪から逃げ続けるのではなく、自分が傷つけた相手を今度は救うという選択をします。
本作におけるナターシャの贖罪は「罪が消えること」ではなく、「同じ支配を終わらせるために行動すること」として描かれます。

18. 姉妹の別れとナターシャの新しい決意
レッドルームを脱出したウィドウたち、アントニア、メリーナ、アレクセイ、エレーナは合流します。
ナターシャは、エレーナへ自分たちの幼少期の合図だった口笛を返し、姉妹としての関係を取り戻します。
エレーナは、自分が気に入っていたポケットの多いベストをナターシャへ渡します。このベストは後に『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でナターシャが着用しており、離れていてもエレーナとのつながりを持ち続けていたことが分かります。
ナターシャはその場に残り、近づいてくるロスたちへ一人で向き合います。
そして2週間後、髪を金髪に変えたナターシャはリック・メイソンと再会し、クインジェットを受け取ります。
彼女は「もう一つの家族」を助けに行くつもりだと話します。
レッドルームの家族と向き合ったことで、今度は分裂したアベンジャーズという家族を放置しないと決めたのです。
この状態から、スティーブ、サムらとともに逃亡生活を送りながら活動する『インフィニティ・ウォー』のナターシャへつながります。


ポストクレジット
時代は『アベンジャーズ/エンドゲーム』後。エレーナはオハイオにあるナターシャの墓を訪れ、幼い頃と同じ口笛を吹いて姉を悼みます。
そこへヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌが現れます。エレーナはすでに彼女と仕事上の関係を持っており、ヴァレンティーナは次の標的としてクリント・バートン/ホークアイの写真を見せ、「ナターシャの死に責任がある男」だと伝えます。
実際にはヴォーミアでナターシャ自身がクリントを生かすために命を投げ出しており、説明は大きく歪められています。この場面がそのままドラマ『ホークアイ』でエレーナがクリントを追う理由になります。


主要キャラクターまとめ

ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ
元レッドルームの暗殺者で、S.H.I.E.L.D.を経てアベンジャーズとなった人物。
本作では逃亡中に、ブダペストでアントニアを巻き添えにした罪や、エレーナをレッドルームへ残した過去へ戻ります。重要なのは、過去を正当化したり消したりしないことです。アントニアとウィドウたちを解放し、エレーナとの姉妹関係を取り戻すことで、過去に対して今できることを選ぶ人物として描かれます。
最後にはレッドルームの家族だけでなく、分裂したアベンジャーズも自分の家族としてつなぎ直す方向へ進みます。

エレーナ・ベロワ
ナターシャとオハイオで暮らしていた“妹”。幼少期にレッドルームへ送られ、ブラック・ウィドウとなります。
化学的洗脳から解放された後、同じ境遇のウィドウたちを救おうと行動します。ナターシャより感情を率直に表し、オハイオでの生活も「自分には本物だった」と主張します。
本作でナターシャとの関係を修復し、ポストクレジットから『ホークアイ』へ続く重要人物です。

アレクセイ・ショスタコフ/レッド・ガーディアン
ソ連/ロシア側のスーパーソルジャー。1995年にはナターシャとエレーナの父親役を演じていました。
自分をキャプテン・アメリカに対抗する英雄と考え、再会時も娘たちが抱えた傷を十分理解していません。しかしレッドルーム攻略を通して、任務だった関係を父親として選び直していきます。

メリーナ・ヴォストコフ
ナターシャとエレーナの母親役だったウィドウで、科学者として現在のレッドルームの精神・行動制御研究にも関与しています。
命令を優先してきましたが、ナターシャとの再会によってオハイオでの生活が完全な演技ではなかったと認め、最終的にドレイコフを裏切ります。

ドレイコフ
レッドルームの支配者。少女たちを集め、訓練・洗脳して世界各地へ工作員として配置します。
娘アントニアすら兵器として利用し、本人の意思より「使える資産」であることを優先します。本作における、自由意思を奪う支配システムそのものの中心人物です。

アントニア・ドレイコフ/タスクマスター
ブダペストの爆破で死亡したと思われていたドレイコフの娘。重傷から生き延びた後、父によって改造・支配され、他人の戦闘動作を模倣するタスクマスターとして利用されていました。
ナターシャにとって過去の罪の象徴であると同時に、アントニア自身もレッドルームの被害者です。最後は解毒剤によって自由を取り戻します。

リック・メイソン
逃亡中のナターシャを支える調達屋。偽造身分、潜伏先、移動手段を用意し、最後にはクインジェットも調達します。
重要アイテム・組織
レッドルーム
少女たちを訓練・洗脳し、暗殺者ブラック・ウィドウへ育成する秘密組織。
ナターシャは過去に壊滅させたと思っていましたが、実際にはドレイコフが生存し、世界中にウィドウを潜伏させる巨大なネットワークとして存続していました。本作では空中施設からその工作員を管理しています。
ブラック・ウィドウ計画
少女たちを工作員へ変えるレッドルームの育成・支配システム。
ナターシャの世代では過酷な訓練や心理操作が中心でしたが、エレーナの世代では化学的な精神支配まで導入されています。「ブラック・ウィドウ」がナターシャ一人ではなく、多数の女性に与えられた役割でもあることが明確になります。
レッドダスト/解毒剤
現在のウィドウへ施された化学的な精神支配を解除する赤い薬剤。
オクサナがエレーナへ使用したことで物語が始まり、最後にはエレーナが多数のウィドウを、ナターシャがアントニアを解放します。奪われた自由意思を取り戻す象徴です。
タスクマスター・プログラム
アントニアへ組み込まれた戦闘分析システム。相手の動作を解析し、アベンジャーズを含むさまざまな戦闘スタイルを再現します。
エレーナのタクティカルベスト
エレーナが気に入っているポケットの多いベスト。終盤でナターシャへ渡され、『インフィニティ・ウォー』ではナターシャが実際に着用しています。
大きな兵器ではありませんが、姉妹としてつながった証拠が後作品にも残っている小物です。
MCU的に重要なポイント
1. エレーナ・ベロワの初登場
ナターシャの妹としてエレーナがMCUへ初登場。レッドルームから自由になり、ポストクレジットではヴァレンティーナからクリントを標的として提示され、そのまま『ホークアイ』へつながります。
2. ナターシャとホークアイの「ブダペスト」が具体化する
『アベンジャーズ』以来語られてきたブダペストの事件が、ドレイコフ暗殺作戦だったと判明します。さらにナターシャがアントニアを巻き添えにする決断をしていたことも明かされ、「赤い帳簿」の罪が具体化します。
3. レッドルームとブラック・ウィドウ計画が本格的に描かれる
これまで会話や回想でしか触れられなかったナターシャの出身組織が初めて物語の中心となり、世界中に多数のウィドウが存在することも明確になります。
4. タスクマスター/アントニアの登場
ナターシャが過去に犠牲にした少女アントニアが生存し、タスクマスターとして利用されていたことが判明。最後には洗脳から解放され、ナターシャの過去の罪に一つの区切りがつきます。
5. 『シビル・ウォー』から『インフィニティ・ウォー』をつなぐ
本作は、トニー側から離れたナターシャが、スティーブたちとともに行動するようになるまでの空白を補完します。金髪への変化や、エレーナから受け取ったベストも『インフィニティ・ウォー』の姿へ直接つながります。
6. ヴァレンティーナとエレーナの関係
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でジョン・ウォーカーへ接触したヴァレンティーナが、エレーナともすでに仕事上の関係を持っていることが判明します。
7. 『エンドゲーム』のナターシャを補強する
本作でナターシャは、血縁ではないオハイオの家族とアベンジャーズの両方を「自分が選んだ家族」として受け入れます。この考え方は、『エンドゲーム』でクリントを生かし自分が犠牲になる決断にもつながる人物像を補強します。
作品のテーマ
「家族」は血ではなく、自分たちが選ぶもの
オハイオの家族は国家が作った偽装でした。それでもエレーナにとっては本物の幼少期であり、再会した四人は最後にその関係を自分たちの意思で選び直します。
同じ構造はアベンジャーズにも重なります。血縁や与えられた役割ではなく、互いを守ると選び続けることが家族を作るという考えが本作の中心です。
自由意思を取り戻すこと
レッドルームは少女たちの人生、身体、最終的には意思そのものまで支配します。そのため勝利はドレイコフを殺すだけでは成立せず、ウィドウたちとアントニアが自分の意思を取り戻して初めて完成します。
過去の罪は消せないが、その後の選択は変えられる
ナターシャがアントニアを巻き添えにした事実は消えません。アントニアを救っても過去がなかったことにはなりません。
それでもナターシャは同じ仕組みで苦しむ女性たちを救う側へ回ります。本作の贖罪は「許されること」ではなく、過去を認めたうえで今度は何を選ぶのかという行動として描かれます。
まとめ
『ブラック・ウィドウ』は、ナターシャの過去を説明するだけの前日譚ではありません。
『シビル・ウォー』で再び一人になった彼女が、幼少期に置き去りにしたエレーナ、アレクセイ、メリーナと再会し、自分を作ったレッドルームを終わらせる物語です。
ブダペストでアントニアを犠牲にした罪は消えません。しかしナターシャはアントニアを救い、支配されていたウィドウたちへ自由を返すことで、過去から逃げずに向き合います。
そして、任務から始まったオハイオの家族も、血のつながらないアベンジャーズも、自分が選んだ家族だと受け入れます。だから最後には一人で逃げ続けず、分裂した仲間たちのもとへ戻ることを選びます。
公開順ではすでに彼女の最期を知っているからこそ、本作は『エンドゲーム』で家族のために命を差し出したナターシャへ、**「なぜ彼女はそこまで家族を大切にしたのか」**という背景を与える作品です。

